2021年式のハリアー 2.0 Zレザーパッケージ、黒、修復歴なし。MOTAに掲載されたこの1台には5社の概算が並び、最も高い社の下限は327.9万円、最も低い社の下限は265.9万円でした。差は62万円です。成約額でも実車査定の確定額でもありません。ネット上の概算が、同じ車でこれだけ開いたという数字です。
5年落ちのハリアーを下取りに出して、新型ハリアーやレクサスNXへ乗り換える。その資金計画は、今の車がいくらで売れるかを起点にしています。年式と車名で調べた「相場」を予算に入れる前に、その数字がどこまで自分の車に当てはまるのかを確かめておく必要があります。
この記事で扱う車と、扱わない数字
私のハリアーは、2021年5月に新車で買った80系(型式MXUA80)です。ガソリンの2WDで、グレードはZレザーパッケージ、色は黒。乗り始めて約5年になります。黒にしたのは、顔つきに一番合うと感じたからです。
この記事に出てくる金額は、私の車の査定額ではありません。MOTAの公開入札実績から、型式・グレード・年式が私の車と同じ3台を選んで並べたものです。条件を決めて抽出した統計ではなく、選んだ3つの事例です。
同じ年式・グレードでも、最高概算は1台ずつ違う
3台とも2021年式・2.0 Zレザー・MXUA80・修復歴なしです。走行距離は、掲載されている区分をそのまま写しています。
| 事例 | 色 | 走行距離(掲載区分) | 査定依頼日 | 最高社の概算 | 出典 |
|---|---|---|---|---|---|
| A | 黒 | ~3万km | 2026-09-09 | 297〜300万円 | MOTA掲載ページ |
| B | パール系 | ~4万km | 2026-09-03 | 319〜325万円 | MOTA掲載ページ |
| C | 黒 | ~6万km | 2026-10-05 | 327.9〜335万円 | MOTA掲載ページ |
この表から「走っている方が高い」とは読めません。「黒は安い」とも読めません。~6万kmのCが最も高く、黒のAがパール系のBより低いのは表のとおりです。ただ、事例は3台しかなく、査定依頼日も違います。装備や内外装の状態も、この比較では確認できていません。距離や色を差の原因と決める材料はありません。
同じ理由で、297〜335万円を「2021年式ハリアーZレザーの買取相場」と呼ぶこともできません。この表が示すのは、年式とグレードと型式がそろっていても、最高社の概算は1台ごとに違うということです。車名と年式だけでは、自分の車の予算は決まりません。
1台の中でも、5社の概算はこれだけ開く
事例Cの1台に並んだ5社の概算です。
| 概算の高い順 | 概算レンジ |
|---|---|
| 1社目 | 327.9〜335万円 |
| 2社目 | 305.5〜315.5万円 |
| 3社目 | 302〜310万円 |
| 4社目 | 288〜300万円 |
| 5社目 | 265.9〜270.9万円 |
1社目と5社目の下限の差は、327.9−265.9=62.0万円です。これは同じ1台に対するネット概算の開きです。この車が62万円高く売れたという意味ではありません。下取りと買取の差でも、手取りの差でもありません。
売る側にとっての意味は、最初に受け取った1つの数字が、全体のどの位置にあるのか分からないということです。5社目の概算だけを見ていたら、それがこの車の値段に見えていたはずです。
下取りと買取は、同じ条件の価格ではない
トヨタは公式の買取案内で、次のように説明しています。
- 買取:その場で手放すときの価格
- 下取り:次の車の納車まで乗り続ける前提の価格。その間の相場変動を含む
つまり、手放す日が違えば、提示額の前提も違います。今週引き渡す買取店の見積と、数か月先の納車日に引き渡す下取りの見積をそのまま並べても、条件のそろった比較にはなりません。
同じページでトヨタは、査定価格に自動車税の未経過相当額とリサイクル預託金相当額を加えて支払う、とも説明しています。これはトヨタの支払い方の説明で、どの店も同じ扱いとは限りません。提示額にこの2つが含まれているのか、別に加算されるのかは、見積書で店ごとに確かめてください。
中古車店の店頭に並ぶハリアーの販売価格も、売る人が受け取る金額とは別のものです。店頭価格を自分の車の売値と取り違えないための読み方は、中古ハリアーの価格ガイドで扱っています。
予算に入れるのは、査定額ではなく手取り
次の車に足す金額は、次の2つの式に分けて考えると、見積同士を比べやすくなります。
- 追加資金 = 次の車の支払総額 − 売却で得る手取り
- 手取り = 売却代金(残債・費用を引く前) − 残債の清算額 − 売却時に差し引かれる費用
ローンが残っている車について、トヨタは買取金額から残債を差し引いて支払うと説明しています。次の2点は、ローン契約先と売却先の両方に確認してください。
- 残債が売却額を上回る場合の扱い
- 所有権の解除の手続き
残価設定ローンの契約書に書かれた残価は、今の買取価格ではありません。残価と手取りの関係は、残クレの記事で整理しています。
架空の計算例(実在の見積や私の契約とは関係のない数字です)
- 次の車の支払総額:520万円
- 売却代金(残債・費用を引く前):300万円、残債の清算:40万円、その他の差引費用:0円 → 手取り260万円
- 追加資金:520−260=260万円
この式では、売却代金が20万円変われば、追加資金も同じ20万円動きます。査定額の欄だけを比べるのではなく、残債などを引いた後の手取りで比べる理由はここにあります。
式の左側の「支払総額」も、車両価格ではなく実際に払う総額で置いてください。新型ハリアーの総額は新車価格と総額の記事で計算できます。NXを候補に入れている場合は、ハリアーとの差額をNXとの比較記事で把握してください。手取りから逆算した予算と並べると、どこまで足せるかが見えます。
実車見積は、条件をそろえて取る
トヨタも、価格は車種や使用状況で変わるため、正確な見積には店舗での査定が必要だと案内しています。WEB概算は、実車を見せる店を絞るための材料です。概算を受け取ることと売買契約を結ぶことは別の段階です。
実車見積では、次の4つをそろえます。
- 1. 時期:同じ週のうちに、各店の査定を受ける。
- 2. 引渡日:ディーラー下取りの納車日と同じ引渡日を、買取店にも伝えて見積を出してもらう。
- 3. 状態の申告:知っているメーター交換・災害・修復・走行の不具合は、どの店にも同じように伝える。日本自動車購入協会(JPUC)は、契約前に把握している不具合の申告を求めています。あわせて、査定する側の見落としを売り手に負わせるような相談事例も紹介しています。
- 4. 書面:支払額の内訳、入金日、引渡日、引渡後に減額される条件、キャンセルできる条件と費用を、契約前に書面で確認する。
集めた見積は、次の表に書き写すと比べやすくなります。
| 確認項目 | ディーラー下取り | 買取店1 | 買取店2 |
|---|---|---|---|
| 査定額 | — | — | — |
| 自動車税未経過・リサイクル預託金相当額の扱い | — | — | — |
| 残債の清算額 | — | — | — |
| 手取り | — | — | — |
| 入金日 | — | — | — |
| 引渡日 | — | — | — |
| 引渡後の減額条件 | — | — | — |
| キャンセル条件と費用 | — | — | — |
「査定額」の行が一番高い店が、手取りの行でも一番とは限りません。まず手取りで比べます。手取りが近い場合は、入金日と減額条件で選びます。
決める前に、手元の数字が何なのかを確かめる
5年落ちのハリアーのリセールを、検索で出る平均やWEB概算1本で決めると、次の車の予算はその不確かな数字の上に組まれます。同じ1台で5社の概算の下限が62万円開いた事例がある以上、決め手にするべきなのは別の数字です。同じ時期・同じ引渡日・同じ状態申告で取った複数の実車見積と、そこから残債などを引いた手取りです。
ディーラー下取りを比べる相手に入れるなら、トヨタ店舗での実車査定もその1本に加えてください。そのうえで、表の手取りの行を見て、どこに売るかを決めます。
